2017-04-19
平成29年4月(第68号)
最近はワックス清掃などの現場でスタッフの一員として作業することも少なくなりました。しかし僕は小学生の時から、手伝わないと、猫を捨てると脅されたり、カラカラせんべいを買ってやると甘い言葉をかけられたりして、清掃の現場で手伝いをさせられていました。初めての掃除現場での僕の役職は「フロアポリッシャーの重り」という仕事で、現場で一日中くるくる回るポリッシャーの上が僕の持ち場でした。こんなに知的に暇でしかも体力を使い、かつ無意味な仕事はそうそうありません。今思えば、僕が自己同一性、なぜ自分はこの世に生まれてきたのか等とソクラ的に、深く考えた最初の瞬間であります。同時に、今生きていく上で僕が一番重視している、平衡感覚の礎を身に付けた瞬間であったかもしれません。学校を卒業すると東京の掃除屋さんに就職し、昼ご飯を食べる時は何時も、今でも取り寄せている、クリーンシステム科学研究所刊行「月刊ビルクリーニング」を愛読するという生活を送っていました。今日は掃除屋さんとして30数年のキャリアから培った奥義を伝授します。といっても、それは上手にお掃除をする技術ではなく、上手に人を叱る技術なのですが。掃除の仕事の報われる瞬間といえば、なんといってもワックスを塗り終わってピカピカに光る床を見たときです。ワックスを塗る時間はさほどでもないのですが、そこに至るまでの打ち合わせや、その下地を作るための苦労や要求される知識は大変なものです。そうして一面塗り終り明鏡止水の心で朗らかな微笑みと共にワックスを改めて見上げた時に、もしも何者かの足跡をハケーンした場合に皆さんはなんと思いますか?おそらく朝からの苦労を踏みにじられたような気持になり、怒りがこみ上げ「誰だ!歩いたのは!!」と声を荒らげたくもなるでしょう。プロ失格です。全くド素人と言えます。汚い足跡を見つけてもプロの掃除屋の心は明鏡止水のままです。軽い微笑みもそのままです。そして次の行動でどうするかというと、まず微笑んだまま壁際に行きます。そしておもむろに利き手を壁に付け、姿勢を安定させます。それからゆっくりとさりげなくタイミングを見計らい、自分の利き手が右手であった場合は、右足の裏を微笑みながら一瞬チラッと確認します。当然その一人四の字固めのような行為を誰かに見られるようでは、まだまだプロの掃除屋とは言えません。足の裏にワックスが付いていなくても、あ、俺じゃないなと思って微笑みを緩めてはいけません。安心するのはまだ早いのです。なぜならば人間には、もう一本足があるからです。勿論靴裏の模様も、この時に記憶に焼き付けます。万が一自分が犯人であった場合は、微笑みのまま何事もなかったように、可及的速やかに、その日一番の動きで現状復帰に移ります。そして、そうでなかった場合。ようやくここで初めて、微笑みが自然に消えるのに任せます。ここにきていよいよ自らが法の権化になった気分で、満を持して「誰だ!歩いたのは!!」という言葉を淀みなく、朗々と声高らかに、腹の底から発することが出来る訳です。それからあとはネチネチチクチクとゲソから犯人捜しをするだけです。この工程を経ずに腹の底から大きな声を出した場合、その日一日、やけに艶のある足の裏を、誰にも見られないように、みょうちくりんな姿勢で行動し続ける羽目になるという紛れもない真実を、本物のプロの掃除屋だけは知っているのです。
有限会社 森茂八商店 HP
ちょっとお知らせ
今年度も4月3日より、鶴岡市住宅リフォーム補助金スタートしていますヾ(o´∀`o)ノ
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